【Vol.4】
商標権侵害訴訟 原告「ひかり司法書士法人」VS被告「司法書士法人ひかり法律事務所」

H22(ワ)第1232号 商標権侵害差止請求事件

1.事案
原告「ひかり司法書士法人」は、被告B1及び被告法人「司法書士法人ひかり法律事務所」が、原告の商標「ひかり」に類似する商標を、指定役務と同一・類似の役務に使用しているため、商標権を侵害しているとして提訴した。
 これに対し、裁判所は、被告B1及び被告法人「司法書士法人ひかり法律事務所」が、原告「ひかり司法書士法人」の商標権を侵害していると認め、被告B1に対して675万、被告法人に対して353万の損害賠償を支払うよう命じた。

2.争点
(1)侵害の要件
@商標の類否判断
 被告は、被告法人の商標「ひかり法律事務所」は、全体が一連一体であって、原告商標「ひかり」とは類似しないと主張した。
 これに対し、裁判所は、「法律事務所」は、役務の質を表示する部分であって識別力はなく、「ひかり」の部分に識別力があるため、被告商標「ひかり法律事務所」と原告商標「ひかり」は類似すると判断した。
→自己の商標の一部のみが、登録商標の一部と同一である場合であっても、両商標が類似と判断される可能性が高い。

(2)損害不発生の抗弁
 被告は、原告と被告の業務を行う地域が、京都と東京とで離れているため、需要者が被告商標と原告商標を混同するおそれが生じず、損害が発生しない旨主張した。
 これに対し、裁判所は、被告は、インターネット広告により全国的にサービスを展開しているといえるため、事業所の所在地が離れていたとしても、需要者が混同していないとはいえないと判断した。
→商標権の効力は全国的に及ぶ一方、インターネット広告等を行っていれば、全国的に広告を行っていると判断され、例え事業所の位置が離れていたとしても、需要者が混同すると判断されるおそれがある。この場合、損害不発生の抗弁が認められない可能性が高い。

(3)商標法第26条第1項第1号
@使用
 被告は、広告等に使用した被告商標は、「自己の名称を普通に用いる方法で表示している」ため、商標法第26条第1項第1号の使用にあたると主張した。
 これに対し、裁判所は、被告は、広告の最下段に、本文部分とは異なる白抜き文字の大きな文字で「ひかり法律事務所」と表記している。そのため被告商標は、需要者の注意を惹くような態様で表記されており、広告に係る役務の出所を表示させる機能を発揮しているといえる。よって、被告商標の使用は、「自己の名称を普通に用いる方法で表示している」にはあたらないと判断した。
→広告の最下段に、本文部分とは異なる白抜き文字の大きな文字で自己の名称を表示する場合には、第26条の「自己の名称を普通に用いる方法で表示している」とは認められない可能性が高い。
A商標
被告「司法書士法人ひかり法律事務所」は、被告商標「ひかり法律事務所」が自己の名称の使用にあたるとして、商標権の効力が及ばない旨主張した。
これに対し、裁判所は、「ひかり法律事務所」は、「司法書士法人ひかり法律事務所」の略称にあたり、被告法人にとって自己の名称にあたらず、商標権の効力が及ばないということはできないと判断した。
→自己の名称の一部の使用では、第26条の「自己の名称」と認められない可能性が高い。

このような事件に巻き込まれないためにも、事前に事務所名等について商標権を取得していただくことが大切です。安心して事業を続けていくためにも、ぜひ商標権登録をご検討ください。



掲載日:2011.12.13
作成者:木村
※ご意見・ご感想・ご質問等は作成者までご連絡ください。

TEL:045-534-7618       
FAX:045-412-6703


Copyright (C) 2013 HIBIKI IP LAW FIRM All Rights Reserved.
トレマは、「工業所有権に関する手続の代理又は鑑定その他の事務」等を指定役務とする商標登録を受けております。